30歳からのニューヨークライフ。

このブログは、30代にしてニューヨークに来てしまったゲイが思ったことを不真面目かつ真面目にお届けしようと試みるブログです。

R.I.P いきなりステーキ。〜ニューヨーク店が失敗した理由〜

最近、いきなりステーキの悪い噂をよくニュースで目にするようになりました。噂というか、評判。

 

僕がニューヨークにきた2年前は、マンハッタンにバンバンお店を出して、物凄い勢いで店舗数を増やしていました。日本ではいきなりステーキを食べたことがなかったですが、悪いイメージは毛頭なかったですし、僕自身、ニューヨークで日本食に飢えてたこともあり、ぜひ行きたいなーと思って楽しみにしていました。

 

また、ニューヨークに店舗を出す際のコンセプトが、「チップなしで日本のステーキのサービスを提供する」というものだったので、「がんばれ!」と思い、応援したい気持ちもあり、店舗に足を運びました。それが、今ではニューヨークの多くの店舗が閉店するばかりではなく、大元の日本国内の店舗ですら経営が危ないと聞くようになりました。

 

でも、それもわかるような気がします。必然だったというか。というのも、僕がニューヨークのいきなりステーキした体験も「ここは2度目はないな」と思わざるを得ないものだったからです。

 

まず、肉がと味付けが雑。

塩、こしょうの味しかせず、肉の旨味を感じることがありませんでした。おそらく同じ値段では、びっくりドンキーの方が美味しいプレート料理を提供してくれる気がします。そもそもですが、アメリカで「ステーキ」というジャンルで闘うのならある程度のレベルの高さが求められると思います。というのも、アメリカのお肉はスーパーで売ってるものですら美味しいからです。そしてステーキはアメリカ人にとって、日本人よりポピュラーかつ身近な存在でで、おそらく人生の中で何度も普通に食ベる料理だと思います。「いきなりステーキで食べるステーキより、ホールフーズで買って塩こしょうで味付けする方が美味しい」と思ったニューヨーカーは山ほどいたのではないかと思います。そこのマーケティングが甘かったように感じます。

 

また内装もコンセプトに合っていなかった気がします。

最初から高級路線ではないかったにしろ、店舗の作りは中途半端な居酒屋のようで、また座席はテーブル席でなく、吉野家のような据え置きタイプの固定式でした。そして他人との距離がものすごく近く、対面にプレートを挟んで人が座るタイプの作りの席もありました。これは日本の飲食店でよくみるタイプですが、アメリカ人はこれでは落ち着いて食事はできない。ステーキは落ち着いて食べるものだと個人的には思います。知らない人がプレート越しとはいえ、テーブルをシェアして対面にいるのは居心地が悪い。日本人とアメリカ人の感覚の違いを考慮したのだろうかが疑問です。これは大きな失敗点の一つだと思います。

 

さらに言うなら、スタッフの教育にももう少し力をいれるべきだったと思います。

いきなりステーキだけの話ではないのですが、ニューヨークの日本飲食店で残念だなと思うのが、日本人スタッフがいないことと、日本語を話せるスタッフがいないことです。そしてそれ以上に、サービスがとにかく雑でした。教育がされていないということがすぐにわかりました。スタッフはバタバタしていて、気がきかず、僕はオーダーを忘れられて、再度確認してやっと料理が運ばれてきた次第でした。この時点でゲンナリですよね。

 

そして、個人的に残念だったことは、来店後にした本社への問合せに対して返事がなかったことです。大きなことではなかったのですが、支払いの際にチップの部分がよくわかりませんでした。というのは、いきなりステーキのニューヨークでのコンセプトはチップを支払わなくても良い、というのが売りだったはずです。だからこそ、自分は行ってみたいと思いました。

 

勘違いして欲しくないのは、僕はニューヨークではチップはとても大事だと理解していて、実際に99%の店でチップを最低15%以上支払っています (1%はとんかつの松の屋さんなどのチップ不要の店です)。なので、この街でチップを払うことに抵抗はありません。ただ、いきなりステーキニューヨーク店は「チップ不要」を当初売りにしていたからこそ、そこのコンセプトは大事だと思いました。

それなのに、支払いの際にレシートにチップの明示があり、レジやスタッフからも特に説明がありませんでした。ちなみに、松の屋さんは店舗に「チップ不要」としっかり掲示してあります。

 

その日はチップを込みで支払って店を出ましたが、何かモヤモヤが残っていたので、後日いきなりステーキのカスタマーセンターに問合せのメールをしてみました。それもクレームのような言い方でがなく、単純に質問としてのメールです。内容は完結にいうと、「ニューヨークの店舗ではチップの支払いは必要ですか?」といったものです。

 

もしそこで、「必要です」と返信がきたら単純に「お、必要なんだね!了解!」と思ったと思いますし、そこに抵抗はなかったと思います。ニューヨークでチップを払うことはそれほど常識になっているので、支払いに抵抗するつもりは少しもありませんでした。「ああ、コンセプト変えたのね」くらいの反応だったと思います。

一方、「必要ではありません」ときたら、「チップを払う必要がないのは良いよね、節約にもなるし、日本人として応援します」となっていたと思います。実際、僕は自分でとんかつを自炊できますが、チップの支払いがない松の屋さんにしばしば食べに行っていますし、日本人以外の友人を連れて行くこともあります。つまり、どっちに転んでもよかったほど、軽い質問だったわけです。

 

でも、残念ながらいきなりステーキから一切の返信はありませんでした。正直に言えば、「ニューヨークの店舗に日本人が食べに行って日本語で質問してるのだから、返信はあるだろう、日本企業だし」と思っていた自分はいました。答えがどちらだったにせよ、ニューヨークに故郷の味が食べられる場所があるのは嬉しいので、体験はベストではなかった、けど、そんなことはニューヨークのレストランでの飲食では普通おこることなので、頻繁ではないにせよまたいきなりステーキに食べに行くこともあるのかな、と思っていました。

 

でも、問合せへの返信がなかったことで、「この店は二度とないな」というスイッチに切り替わりました。お客がお店から離れる理由って、小さなことだと思います。軽いメールだったから尚更その反動は大きかったかもしれません。別に鼻をほじりながらでも、ありがとうとは思っていなくても、たった一通の返信メールを問合せしたお客さんに返していれば、その顧客(自分)の感じた悪かった印象が変わっていたかもしれません。

 

ニューヨークはタフな街です。その中で奮闘している日本企業を応援したくない日本人なんているでしょうか?僕はいないと思います。何か一つ、記憶に残る体験やストーリーがあれば、お客さんは必ずその店に戻ってきます。いきなりステーキは自分とのその機会を永遠に失ってしまいました。単純に残念な気持ち以上に、彼らの自業自得だなと思います。いや、ニューヨーカー風に言えば、「ざまあみろ」かもしれません。いきなりステーキのニューヨークでの失敗を総括するなら、「全てのコンセプトが中途半端だった」ことに尽きると思います。そしてその原因が顧客からレスポンスを全く無視してきたことだろうと思います。

 

R.I.P いきなりステーキ。あなたが衰退する様をおかずに白飯をお腹いっぱい食べることにします。